今治市


令和3~4年度 今治北高等学校大三島分校 島デザイン部:テーマ「大見神楽」

瀬戸内海上交通の要所で、造船やタオル業が盛んな、人口約15万人の都市です。R3年度に、今治北高等学校大三島分校が、県指定無形民俗文化財「大見神楽」をテーマに活動を行いました。450年間受け継がれてきた大見神楽は、明日神楽とともに「大三島の神楽」として愛媛県の無形民俗文化財に指定されています。大見神楽の舞台となる大見集落では、地域の消防団員等が担い手となり、毎年、家内安全、五穀豊穣を願って神楽が奉納されています。

今治北高等学校大三島分校と愛媛大学が大見神楽をテーマに制作したポスター。タイトルは「とんこ  とんこ  とんとん」、撮影場所は「今治市大三島大見八幡太神社と大見神楽」。「とんこ  とんこ  とんとん」これは太鼓と笛で奏される大見神楽の拍子である。長く集落に根差してきた大見神楽は大見の消防団を中心に受け継がれている。彼らは神楽の1週間前から舞の練習や準備を始め、かつては当家の人たちがそれを支えていた。練習後の当家での直来が舞太夫たちの仕来りである。本番当日、神社は神楽の拍子に惹かれて集まった住民たちで賑わう
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とんこ  とんこ  とんとん

今治市大三島 大見八幡太神社と大見神楽


「とんこ  とんこ  とんとん」これは太鼓と笛で奏される大見神楽の拍子である。長く集落に根差してきた大見神楽は大見の消防団を中心に受け継がれている。彼らは神楽の1週間前から舞の練習や準備を始め、かつては当家の人たちがそれを支えていた。練習後の当家での直会が舞太夫たちの仕来りである。本番当日、神社は神楽の拍子に惹かれて集まった住民たちで賑わい、住民と舞太夫は神楽を通して楽しい時間を共有する。そんな神楽に関わる人たちを温かく見守る動物たち。平成23 年に新築された大見八幡太神社は受け継いできた人たちの続けていこう” という意思の表れである。「とんこ  とんこ  とんとん」この舞台で来年もまた、大見神楽が行われる。

 


 今治北高等学校大三島分校と愛媛大学が大見神楽をテーマに制作したポスター。タイトルは「露祓い  御神楽の舞」、撮影場所は「今治市大三島 大見神楽保存会」。大見神楽。神に人々の祈りを捧げるため、毎年旧暦の1月12日前後の日曜日にこの集落で神楽が行われる。神楽は舞太夫が列をなして神殿入りするところから始まる。神殿に入って最初の舞は「露祓」と呼ばれ、猿田毘古神を模した天狗の面をかぶった舞太夫が1人で舞う。刀で邪気を切りながら舞う姿は非常に勇壮であり、その迫力は一気に場の空気を変える。
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露祓い  御神楽の舞

今治市大三島 大見神楽保存会


大見神楽。神に人々の祈りを捧げるため、毎年旧暦の112日前後の日曜日にこの集落で神楽が行われる。神楽は舞太夫が列をなして神殿入りするところから始まる。神殿に入って最初の舞は「露祓」と呼ばれ、猿田毘古神を模した天狗の面をかぶった舞太夫が1人で舞う。刀で邪気を切りながら舞う姿は非常に勇壮であり、その迫力は一気に場の空気を変える。その後神殿を清め、しめ縄を張って神を迎え入れると、陣羽織を着た4人の舞太夫が東西南北そして天地に矢を放ち、四方を祓い清める。そして最後には舞上げを行い神楽が終わると人々は使った道具を持ち帰り、家の魔除けとして祀る。こうして神々は、この地におさまり、人々の生活を見守っている。神楽は集落の住民の生活とともにあるのだ。

 


 今治北高等学校大三島分校と愛媛大学が制作したポスター。タイトルは「大空山南麓  豊かな果樹 大見港の風景」、撮影場所は「今治市大三島 大空山南麓・大見地区と大見港」。愛媛県今治市と広島県尾道市を結ぶ「しまなみ海道」のおよそ中央に位置する大三島。島の北西には大空山という名前の山があり、その南麓から瀬戸内海にかけての地域が大見集落である。海と山に囲まれた小さなこの集落はなだらかな坂道や石垣が多く、かんきつの果樹園が広がっている。太陽の恵みを受けたミカンやレモンなどが実り、集落全体が甘酸っぱい香りに包まれる。
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大空山南麓  豊かな果樹

大見港の風景

今治市大三島 大空山南麓・大見地区と大見港


愛媛県今治市と広島県尾道市を結ぶ「しまなみ海道」のおよそ中央に位置する大三島。島の北西には大空山という名前の山があり、その南麓から瀬戸内海にかけての地域が大見集落である。海と山に囲まれた小さなこの集落はなだらかな坂道や石垣が多く、かんきつの果樹園が広がっている。太陽の恵みを受けたミカンやレモンなどが実り、集落全体が甘酸っぱい香りに包まれる。温かく穏やかな雰囲気のあるこの集落は散歩に適しており、道中の道沿いに佇むお地蔵さんがなんとも愛らしい。ゆったりとした時間が流れるこの集落には、瀬戸内海とかんきつの畑を望める景観とともにおよそ450年の長い歴史をかけ、受け継がれてきた大見神楽が存在する。

 


 今治北高等学校大三島分校と愛媛大学が制作したポスター。タイトルは「瀬戸内海で身を清め神殿に入る」、撮影場所は「今治市大三島 瀬戸内の潮垢離」。神楽が行われる日の早朝、舞太夫たちは大見海岸に集まり、神楽の悪魔祓いで使用する太刀を海水で清めてからこの階段を上がり、神殿入りする。五穀豊穣や家内安全を祈って、毎年新春を祝福して奉納されている小神楽と、昭和12 年まで10 年に1 度奉納されていた大神楽がある。こうして現在に至る大見神楽はおよそ450年もの歴史を誇り、県の無形民俗文化財にも指定されている。
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瀬戸内海で身を清め神殿に入る

今治市大三島 瀬戸内の潮垢離


大見神楽の神楽殿「大見八幡太神社」の眼下には美しい瀬戸内海が広がっている。神楽が行われる日の早朝、舞太夫たちは大見海岸に集まり、神楽の悪魔祓いで使用する太刀を海水で清めてからこの階段を上がり、神殿入りする。大見神楽は伊勢から大山祇神社に伝わり、明日、そして大見へ伝えられたと言われている。五穀豊穣や家内安全を祈って、毎年新春を祝福して奉納されている小神楽と、昭和12 年まで10 年に1 度奉納されていた大神楽がある。こうして現在に至る大見神楽はおよそ450年もの歴史を誇り、県の無形民俗文化財にも指定されている。大見神楽は、集落で1番大きな行事として大切にされている。人から人へ。今日もその伝統が受け継がれていく。

 


フィールドワーク&グループワーク

令和3年(2021) 10月2日に行ったフィールドワークでは、まず大三島を代表する名所、大山祗神社の参道入口からスタート。島デザイン部のメンバーによる参道ガイドを聞きながら古き良き時代にタイムスリップ。続いて、明日八幡神社を訪れ、Uターンされ明日神楽に携わっている方(なんと、島デザイン部メンバーのお父さん登場)に質問タイム。ここからは2チームに分かれて、大見地区(大見八幡太神社・段々畑・大見奥集会所・姫坂神社)を散策し、大見集会所に到着。ここでは、大見神楽保存会や地域の有志の方々から、神楽で用いる楽器や衣装のことなど詳しく教えていただきました。1110日には、今治北高校大三島分校の図書室で、ポスターの写真を選んだり、キャッチコピーとなる言葉を出し合いました。たくさんの候補の中からメンバー全員で議論を重ねて、大見神楽や島の魅力を伝える4枚を選びました。


参考文献

  • 大三島町文化財保護審議会編『大三島町の祭り』大三島町教育委員会(1999年)

  • 大三島町誌編纂会編『大三島町誌』(2004年)
  • 愛媛県教育委員会『愛媛県の民俗芸能~愛媛県民俗芸能緊急調査報告書~』(1999年)
  • 愛媛県教育委員会文化振興局『愛媛県の民俗芸能』(1983年3月/ 印刷: 株式会社関洋紙店印刷所)
  • 愛媛県教育委員会『愛媛の文化財』(1993年3月/ 印刷: セキ株式会社)